げーむふぁくとりぃ

裏話 [ 第4回 本作のゲームバランス ] ※本編のネタバレ含みます



 第4回目です。
今回は、ゲームバランスについて語らせていただきます。

 ゲームバランスとは、ゲームを作るにおいて、とても重要です。
いかに面白いシステムでも、バランスが悪ければ酷評され、その逆もしかりです。

 システムが単調なドラゴンクエストシリーズが愛されてきたのも、
ゲームバランスの良さが大きいでしょう。
ブーメラン、てつかぶと、まほうのたて、みかわしのふく、
この強力にして、強すぎない絶妙な性能は、名前を見るだけでテンションが上がります。

 FF8(ファイナルファンタジー[)のシステムは
FF5(ファイナルファンタジーX)より優れているシステムだと思うのですが、
FF8はバランス調整に失敗しているため酷評されてます。
逆に、FF5はバランスが非常に優れているため、
古いゲームながら、ゲーマー層にはいまだに高い評価を受けています。
FF5は本当にバランスが良くできていて、
いつかこの作品だけで裏話をひとつ書きたいぐらいです(笑)


 この裏話を読んでる方の中に、
ゲーム作りに興味がある人が わりといると思うので、
ゲーム(特に一人用)を作るときに、役に立つ(はず)ポイントを書いてみようと思います。

 @:システムとバランスを同時に考えよう
 A:印象的なバランスブレイカーを作ろう
 B:楽しめるポイントを考えよう
 C:拡大と収束

 今回は、この4つについて書きます


 @:システムとバランスを同時に考えよう

 ゲームを作るとき、システムから作る人はわりと多いと思うですが、
その時、一緒にゲームバランスも考えないと、台無しになることがあります。

 たとえば、
「戦闘中にHPが0になると、1度だけ復活し、
 好きなパラメーターをその戦闘中のみ 2倍にできる。
 しかし、2回目にHPが0になったらその戦闘中は復活できない」
というシステムがあったとします。
 敵が素早い敵なら、素早さを2倍にして対抗する。
わざとボス戦開始直後にやられて、攻撃力を2倍にするのも面白いでしょう。

 一見、面白そうなシステムですが、問題はバランス(プレイした時の感覚)です。

 敵の攻撃力が低すぎて、ちっとも死なない。
ラスボス戦までで、HPが0になったのは たったの3回だけ…。
これでは、システムが何も生かされません。
仮に倒されても、HPや防御力を2倍にするプレイヤーはいないでしょう。

 それでは、序盤からザコ敵がすさまじい攻撃力で、
次々と倒されていくバランスにすれば、システムが生かされるでしょうか?
しかしそれでは、倒されたときHPや防御力をアップさせなければ、
あっという間に全滅です。攻撃力を上げている場合ではありません。
ザコ戦は何度もあるわけですから、そのうち1回でも全滅したら
セーブポイントからやり直しと思うと、
HPや防御力をアップさせつつ、「逃げる」連発が基本になるでしょう。
 非常に落ち着かないゲームになってしまいます。

 ここで方法は2択あります。

 ひとつは、バランス調整を繰り返し、↑上記の中間点のバランスを作ることです。
しかしプレイヤーごとに、戦闘の上手さや理解力に差があるので、とても難しいです。

 もうひとつは、思い切ってどちらかに特化し、それをセールスポイントにすることです。
 ライトゲーマー向け、と考え、「めったに死なない!死んでも1度だけ生き返るよ!」
というのをセールスポイントにすれば、ゲームが苦手な人でも楽しめるでしょう。
 コアゲーマー向け、と考え、
 「ザコ敵も全力で殺しにくる!1度死ぬのは当たり前、だが2度は死ぬな!」
というのをセールスポイントにすれば、
ゲームが得意な人でも緊張感をもって楽しめるでしょう。

 これは、システムとバランスを同時平行に考える、ということです。


 A:印象的なバランスブレイカーを作ろう

 COSMOSカードゲームの場合、
「クスラ」「モロハ」「アヤメ」の3人を「3大ヒロイン」という位置づけで設定し、
実際に人気投票でもトップ3を取っているので試みは成功したようです。
 この3人が使っているフォローカードはレア度が高く、
プレイヤーは0〜1枚しか持ってない時期に、
彼女らはこれらのカードを4〜5枚入れてガンガン使ってきます。
 私が狙っているのは、この時プレイヤーに「ふざけんなよwww」
というリアクションを取らせることです(笑)
「すごく強いな〜」「頭いいな〜」ではなく、
「ふざけるな!!」「おかしいだろ…」でもなく、

「ふざけんなwww」「バカだろwww」「強すぎだろwww」
といった感じで、その強さ、しつこさに思わず笑ってしまいながらも、
最終的にはなんだかんだで勝ててしまう。、
この3人との対戦を、そんな感じの印象的な試合にするのが目的です。
 逆にいうと、この3人以外との対戦では、そういう感じにはならない。そんなバランスです。

 後半になって、プレイヤーがこの3人のカードを逆に使用できると、とても気持ちいい。
その感覚にプレイヤーをどれだけ近づけられるか…というのを考えていました。
 実際には、なかなか想定通りにはいかないんでしょうが、
もしこの3人との対戦中「ふざけんなwww」って感じでニヤついてしまった方がいたら、
それは私の術中にハマったということです(ニヤリ)

 この感覚は、私の敬愛するフリーゲーム「Seraphic Blue」をプレイしたことがあって、
「ショックウェーブDA」「ブラスター・ベルダンディ」「凶滅終焉波動」
などの単語に聞き覚えのある方は、共感していただけるかと思います(笑)

 今作のバランスブレイカーといえば、「モロハ」であると思います。
もともと強力なカードを想定していたのですが、
予想以上に強くて…これは設計ミスなのですが(笑)
そのモロハが人気投票でぶっちぎりの1位を手に入れたことは、
キャラクターの良さだけに限らず、
この圧倒的なカード性能の強さが印象的だったのでは…という気がしてなりません。
 一人用ゲームには、ひとつくらいバランスブレイカーがあった方が、面白いと思います。
もちろん、それを使うことでつまらないという人は、使わなければ良いだけですからね。

 FF7の「超究武神覇斬」FFTの「オルランドゥ」など、
思い出すと、強すぎて笑えてくるうえに、印象的で話題のネタにもなりますしね。


  B:楽しめるポイントを考えよう

 COSMOSカードゲームは、比較的コアゲーマー向けだと思います。

 本作の楽しさ――、それは「詰将棋」にあると考えてます。
私自身は詰将棋はあまりやりませんが(笑)

 COSMOSカードゲームは、カードゲームでありながら、
ランダム性を極力排除しています。
 たとえば、今作では同じカードを5枚まで入れることができます。
これは既存のカードゲームではかなり多い方です。
それによって、「桜舞姫」などの必須カードが
なかなか手札に来ない、ということは起こりにくいです。
 「コモン・ドロー」「イン・トランス」「チェンジ」「リチェンジ」が
強力カードとして評価されていますが、弱体化の予定はありません。
これらのカードは、どの対戦でも、
プレイヤーの想定通りの手札が揃うようにする役割を持っています。
「詰将棋」の状況を作り出すためには、
フィールド上で相手を追い詰め、手元に駒がそろっていることが条件ですからね。

 そして、本作にはランダム要素のある効果を持つカードは1枚もありません。
「このカードは相手に1〜5のダメージを与える」
「リング上の敵味方のいずれかのモンスターの攻撃力が上がる」
「トランスタイムが1〜7のいずれかになる」
 などの効果を持つカードは存在しないのです。
 既存のカードゲームだと、
ポケモンカードのコイントスがもっとも有名で、
遊戯王の「時の魔術師」や、カードヒーローの「レベルチェンジ」などですね。
また、相手のターンに不意打ちで発動する、遊戯王で言う「罠カード」も存在しません。

 何故、こういったカードが存在しないのかというと、
「詰将棋」でなくなってしまうからです。

 本作はかなり先が読みやすいゲームになっています。
 慣れたプレイヤーなら、1ターン、2ターン先の状況を読んで
戦略を立てるようになっている方が多いでしょう。

 「ロール1」「アタックアップ」などを手元に残しておき、
ここで使えば勝てる!、という時に一気に使って勝利をものにした!
という展開が何度があったろうと思います。

 遊戯王カードなら、相手は「罠カード」や「裏側表示モンスター」を出しているため、
勝利をモノに出来るかどうかは、相手のカード次第であり、ハラハラするところですが、
COSMOSカードゲームでは、必勝のカードがそろえば、
ランダム性は無いので100%勝てます。

 先が読みやすい + 必勝のカードがそろえば100%勝ち

 というこのゲームは、
「毎ターンの攻防」というより、「毎ターン 勝利の形に近づいていく」ゲームなんです。
繰り返しプレイすることで、「勝利の形」に近づけるのが得意になっていくのが面白く、
パズル的要素の強い作品に仕上がったのではないか、と考えています。

 ここにランダムの効果を持つカードが大量に入ると、
読み合いも何もない、運に頼るだけのゲームになってしまうので、
本作は「詰将棋」を意識し、ランダム性を意図的に排除しているわけです。

 ジャンケンも、人間とやれば面白いが、
コンピューターとジャンケンしても面白くないだろう、という考えです。

 しかし、これはあくまで「COSMOSカードゲームのゲームバランス」であり、
ランダム性のあるカードがつまらないと言っているのでは、ありません。
そんなことを言ったら城之内くんに怒られます(笑)
 OTで、ランダム性のあるOTカードが登場すれば、
新たな面白さが発見されるかもしれません。


  C:拡大と収束

 この記事の前提の文章を書くに至って
 (こちらのサイト様)の「ゲームバランスとは」の一文が、
説明文としてとても分かりやすかったので引用します。

 ここから引用 「

ゲームが進むに従って取れる戦略が多くなるゲームと少なくなるゲームがある。
前者を拡大系、後者を収束系と呼ぼう。
例えば「カタンの開拓」はゲームが進むに従ってたくさんの資源が取れるようになって、
一ターンにいろいろの事ができるようになる。
これが拡大系である。
逆にチェスでは駒の取り合いになってだんだん少なくなり、
最後には片方がキングだけになってどうしようもなくなってしまう。
これが収束系である。

 」 ここまで引用

 カードゲームは、基本的に、陣形の「拡大」を目指すゲームです。
 たとえば、遊戯王カードゲームで、場にレベル7のモンスターが出ている時に、
横にレベル1のモンスターを召喚して並べることは基本的に有利です。
 COSMOSカードゲームにおいても、リングにレベル7モンスターが出ている時に、
レベル1のモンスターをバースして並べることは「序盤〜中盤」においては有利です。
こうすることで、レベル7モンスターがやられてしまったころには、
横に並べておいたレベル1モンスターのトランスタイムが溜まっているからです。
 上記サイト様の分類で考えると、本作は「拡大系」に属しています。

 しかし、終盤は逆です。高レベルモンスターが1〜2体いるとして、
その横にモンスターを並べていくと不利になります。
高レベルモンスター1体なら、7ターンで7回行動できますが、
高レベルモンスター1体+低レベルモンスター6体だと、7ターンで1回しか行動できません。
 つまり、終盤は意図的にモンスターの数を減らしていかなければいけません。
しかし、モンスターが多いほどダメージを受けにくいシステムなので、
減らしすぎると、高レベルモンスターが連打を受け、あっという間に逆転されてしまいます。

 序盤〜中盤は「拡大」を目指していくのに、終盤は「収束」を目指していくのです。
そして、この終盤が「どのタイミング」かは、ゲーム中に表示されることはありません。

 プレイヤーは、「どのタイミング」で「拡大」から「収束」に切り替えるかの判断する。
この判断こそ、このゲームにおける特徴的な要素のひとつです。
「収束」に移行するのが早すぎると、手が足りなくなって、モンスターが全滅してしまいます。
「収束」に移行するのが遅すぎると、勝つタイミングを逃してしまいます。

 プレイヤーに問われているのは、「通常の将棋」から「詰将棋」になった瞬間の見極めです。
「この状況なら相手を詰めそう(倒せそう)」と判断したら、
その時点でリングを収束させ、スマートにしていくのです。
 ここにランダム要素が加わってしまうと、詰めるのか詰めないのかの判断が困難になります。

 COSMOSカードゲームにランダム要素が無いのは、そういう理由からです。


 ――以上です。 今回はちょっと長くなってしまいましたが、
少しでも、今後ゲームを作ろうかな〜と思っている方の参考になれたら嬉しいです。
ゲームシステムを考えるときには、「そのシステムの何が楽しいのか」を
考えて作るか、考えないで作るかでは、大きく差が開きます。




 今回言いたかったこと まとめ

@ システムとバランスを同時に考えよう
A 印象的なバランスブレイカーを作ろう
B 楽しめるポイントを考えよう
C 拡大と収束