げーむふぁくとりぃ

裏話 [ 第1回 何を削るか ] ※本編のネタバレ含みます



 COSMOSカードゲームの制作にあたって
意識したことを書いていきます。

 さて、ゲームを良くするために、何が必要でしょうか。

 色々なことがあると思いますが、そのうちのひとつが
なんといっても「自由度」でしょう。

 「あれもやってみたい」「これもやりたい」
というプレイヤーの願望があり、
それを達成していくことが、プレイヤーの楽しみなわけです。

 今作では、「250種類のカード」というのがセールスポイントで、
これらは選択肢として与えられています。
 プレイヤーが全てを使う必要は無く、半分も使わなくても、
全国大会で優勝することは可能、というバランスにしてあります。

 もしこれが、カードが「25種類」だったら、少なくてつまらないでしょう。
できることが多い、というのは重要なのです。


 …と、ここまでは、多くの人が考えたことはあるでしょう。
しかし、アマチュアクリエイターの方で、
以下のポイントを意識したことが無い方は、結構いるのではないでしょうか。

 「  何を増やすか より、 何を削るか、 の方が重要


 たとえば、今作では「250種類」のカードが登場しますが、
もし、これが10倍の「2500種類」あったら面白いでしょうか?
…おそらく、面白くはないでしょう。
 そんなに多くのカードがあると、理解するのに疲れてしまいます。

「25種類」でも、話が面白ければ、やる気も起きるでしょうが、
「2500種類」は、もはやそれだけで、やる気が無くなります。

 不思議なことに、ゲームは要素を増やしすぎると、つまらなくなるわけです。


 ボリュームが足りないからと、

無駄に「あそこの森に咲いてる花を摘んできてくれ、モンスターに要注意」
というイベントを追加したり、

 ダンジョンを長くしたり、ボスのHPを必要以上に高くしたり、エンカウント率を上げると、 なかなか物語が進まず、同じ敵とばかり戦わされたり、

 「料理」システム、「クエスト」システム、「宝箱達成度」システム
などを設定してみたものの、面倒なだけのシステムになっていたり、

 ミニゲームが異様な難易度で、そこで詰まってしまったり、

 などなど、ゲームを良くしようとして追加要素を増やしすぎると、
逆にプレイヤーにとってつまらなくなるわけですね。


 今回の作品では、私は「シナリオ」を大幅に削りました。
 私はシナリオを書くのが大好きで、そのためにゲームを作っているような人なんですが、
それは私の都合であって、ゲームをプレイする人には関係のないことです。
 今作では、シナリオは短い方が良いと判断し、なくなく大幅に削りました。

 さて、「なぜ削ったのか」です。

 本作のポイントは「カードゲーム」です。
このゲームをプレイする人は、「カードゲームをやろう」
という気持ちで、プレイを始めるわけです。

 そのため、このゲームのプレイヤーの基本思考サイクルは、


@「カードを買おう」
  ↓
A「良いカードを手に入れた。デッキに入れよう」
  ↓
B「デッキが強くなった。あの強敵に挑んでみよう」
  ↓
C「デッキが強くなったおかげで、勝てたぞ!」
  ↓
D「主人公の地位が上がった。やったぞ!」
  ↓
E「だが、次の敵はさらに強敵らしい。油断はできない」
  ↓
@「お金が増えたから、カードを買おう」


 というのを、想定しています。
ここに、余計なサイクルが入ると、気持ちが乱れてしまいます。
 ためしに、BとCの間にイベントを入れて、ボリュームを増やしてみましょう。


A「良いカードを手に入れた。デッキに入れよう」
  ↓
B「デッキが強くなった。あの強敵に挑んでみよう」
  ↓
 「強敵と戦うには、5つのカギが必要らしい、探しに行こう」
  ↓
 「はやく新デッキを試したいが、カギがあと2つ足りない」
  ↓
 「最後のカギを手に入れたぞ…。これで強敵と勝負できる」
  ↓
 「その瞬間!衝撃のイベント。仲間の一人が殺されてしまった」
  ↓
 「唐突すぎて感動もない。気持ち的には強敵と戦いたいが、イベントが終わらない」
  ↓
 「死んだ人物の回想シーンが始まってしまった。早く終わらないかな」
  ↓
 「飽きてきたので一旦やめたいが、イベントが長くてセーブができない」
  ↓
 「ようやく強敵と対戦できるが、デッキの内容をイマイチ忘れてしまった」
  ↓
 「面倒くさいから、とりあえず戦ってしまおう。まぁ、なんとかなるだろう」
  ↓
C「強敵とウワサされてた割には、あっさり勝ってしまった。何故ここまで引っ張ったのか」
  ↓
 「次の強敵と戦いたいが、その前に、また長いイベントが始まるのか…。」


 シナリオが面白ければ、問題ないのですが、
カードゲームを楽しみたいプレイヤーにとっては、邪魔でしかないイベントです。
逆に、ゲームの魅力を下げています。プレイヤーを飽きさせるのは、かなりのマイナス要素です。


 そこで、今作では、各キャラクターの裏設定や、イベントなどを大幅にカットしました。
そのおかげで、1年というボリュームを、テンポよく味わえる内容になったと思います。


 今回言いたかったこと まとめ

@ 「自由度」を意識する
A  ボリュームのために増やした要素はいらない
B 「何をやりたいのか」を考えながら作る
C  プレイヤーの思考サイクルを想定して、ゲームの流れを構築する
D  重要なのは「何を削るか」